Kダブシャインが語る、「90年代と現代のラッパーの違い」とは?

約230名のラッパーが名乗りを上げた『ラップスタア誕生!』がついにファイナルステージを迎え、11月11日に都内会場で5名のラッパーによる賞金300万円を賭けた最後の戦いが繰り広げられた。フリースタイルブームに端を発した群雄割拠のヒップホップシーンに一石を投じる新たなオーディション企画を勝ち進み“ラップスタア”に一歩近づいたのは誰なのか!?

ということで大会当日、収録スタンバイ中の審査委員長・Kダブシャイン氏に、限られた時間の中で急遽インタビューを敢行。過去の戦いをざっくり振り返りつつ、切磋琢磨する若手ラッパーたちと現代の国内ヒップホップシーンについて語っていただいた。ファイナルステージ放送前の予習を兼ねて、Kダブ氏の言葉に耳を傾けてみよう。


―約230名から1stテージの時点でかなり人数が絞られました。今ファイナルステージを前に、その時残った9人は間違っていなかったなと思えますか?

うーん、番組の方向としては間違ってなかったと思う。個人的には最初の選考で落とした中にも良いラッパーがいたのになぁっていうのは、あるにはある。民主的にすごく話し合って、みんなが納得いくって意味ではこれでいいと思うけど、ほんとに個人的に、ポテンシャルとか才能とか将来性とかっていうのを含めてを考えると、まだまだ惜しい逸材はたくさんいた気がするんだよね。


―最初の放送時から、Kダブさんの周囲で反響はありましたか?

具体的に「あいつ良かったのに何で落としたの!?」みたいなのはなかったけど、トータルで「面白いことやってますねー!」っていうのとか。あと、こういうところでチャンスを掴みたい人たちが男女問わずたくさんいるんだなっていう、ちょっと社会的な“うねり”みたいなものになってるんじゃないかな? っていうことには、わりと驚いた。やっとそういう時代が来たかっていう意味では納得もできたけど、同時に(ヒップホップが)こんなに多くの人の拠りどころになってて、それで作品として表現したいんだなぁってことに、パーソナルな感動みたいなものはあるんだよね。


―今回のオーディションに応募してきたラッパーたちを見て、現在の雰囲気が反映されているというか、今の日本の空気感みたいなものが現れていると感じました。

良い意味でも悪い意味でも感じますね、それは。昔ほど世の中に閉塞感みたいなものがあるっていうふうに世間では言われてないけど、やっぱり俺は昔と変わらずか、それ以上にあると思ってて。そういった閉塞感を(ラッパーたちも)それぞれ抱えてるんだなっていう事実があるんだって。ただ、その受け皿があって良かったなとも思う。


―それは90年代とは違うものですか?

90年代はその“始まり”だったけど、それが結構もう当たり前のようになっちゃってて。いわゆる日本の失われた10~20年とかって言われてるのが90年代からだから。それがもう標準になってるから、今の若者の閉塞感も“なんとなく”であって、そんなに自覚がないものなのかもしれない。それがリリックにも表れてると思うし。

―ではKダブさんたちの時代とは違いますか?

ぜんぜん違うと思う。これは『ラップスタア誕生!』だからラップスターを生むっていう意味でやってるけど、ヒップホップかラップかっていうと、またそこには微妙な線があると俺は思ってて。全員ラップだとは思うけど、ヒップホップかどうかって言うと、べつに自分でそう思ってない奴も選ばれてると思うんだよね。今はその境界線みたいなものが曖昧だから、こういう人選もそれはそれで成立するけど、個人的にヒップホップをすげー感じるか? って言うと、全員にそう思うわけではない。

俺の時代のラッパーは「ヒップホップを根付かせなきゃいけない」とか「良いモノなんだ」っていうことを知らしめたいっていう使命感とか志があって、ヒップホップを“みんなのもの”として共通しながら底上げしてこうよっていう時代だった。特に俺らが出てきた頃から99年くらいまではそういう勢いが強くて。

でも最近の子たちは「俺の心の叫びを、苦しみを、誰でも良いから聴いてくれ!」っていうラップだから、どっちかっていうと自己中心的なラップだとは思ってて。我々の世代はコミュニティとか、共通するヒップホップというものを大事にしている人たちが全員ハッピーになれて、心の糧にして進んでいけるようなものにしようっていう。そういう志は、今のラッパーには感じないかな。


―そういった“自分語り”のようなラッパーが多いということも今の日本の状況を反映してるのかな? と思ってしまいます。

まあ今回はね、課題が自己紹介的なものだったから。どうしてもそうなっちゃうっていうのもあるのかもしれない。


―例えば海外の若手ラッパーになると、また意識が違いますよね。

自分の苦労とかをラップしてる奴はどの時代にもいるけど、そこを「俺! 俺!」じゃなくて、「俺みたいな奴がたくさんいるんだ」っていう視点で書いてるから、聴いてる人の共感も呼ぶし。サビの作り方だったり、ソングライティングとして最終的な仕上げがしっかり出来ていればね。ラップだけ/ヴァースだけ「バン!」って生々しく聴かされると、なんか「あぁ、聴いてほしかったんだなぁ」っていう……。

ただ、やっぱり個人が救われたいってものじゃないと思うんだよね、ラップって。自分と、自分と同じような悩みとか苦しみを持ってる人も救われるべきだし、それ以外にもパーソナルな苦しみじゃないけど、同じ人種だったり民族だっていうことで差別されたり蔑まれてるってことに対して義憤を感じて、「俺の怒りはこうだけど、みんなもそうだろ?」っていう、ちゃんと商品として仕上がってるんだよね、向こうの奴らは。日本はまだ骨組みというか、原初の叫びというか。

俺はこういう悩みを持ってるけど、おそらく同じような奴がいっぱいいいて、みんなこういう悩み苦しみを乗り越えようと日々戦ってるんだろうな……っていうところまで想いを馳せてほしい。「俺は苦しい~」「声を聞いてくれ~」っていうところで終わっちゃうとね。ソングライターとして、これからもアルバムを出し続ける人間として見ると、ちゃんと曲を形にして、歌として仕上げるってことが必須かなと。


―では最後に、ファイナルステージに進出した5人の中でKダブさんが密かに「優勝するのでは?」と予想しているラッパーを教えてください。

DAIAかな。初めて動画を見た時から感じるものがあったんだよね。

果たしてKダブ氏の予想は的中したのか!? 気になる結果は12月3日放送の『ラップスタア誕生!』で確認しよう。

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