ライムスターMummy-D、新作AL「ダンサブル」解説 「Future Is Born」誕生秘話

トラップのビートに挑戦してみたんだけど……

ライターM:RHYMESTERのニューアルバム「ダンサブル」が9月6日にいよいよリリースされましたね!

Mummy-D:というわけで、今回は「ダンサブル」でレコーディングエンジニアをしてくれた前田くん(rey "reynolds” maeda from Nasoundra Palace Studio)をスペシャルゲストに呼んでみたよ。


前田:こういうの初めてなんで、すごい緊張してるんですよ。


ライターM レコーディングって意外とブラックボックスというか。言葉の使用頻度の割に、アーティストが具体的に何をしているのか、実はまったく知らないんです。


前田:「ダンサブル」における自分の役割は、Dさんと宇多丸さんの歌を録って、トラックメイカーの作ったビートに乗せる作業です。曲のパーツを1つにまとめるというか。音の調整のようなミックス作業はまた別の方が担当していました。


Mummy-D:前田くんにはボーカル録りを担当してもらったと考えてくれればいいよ。録ったラップのリズムが走っちゃったり、キー(音程)があわないこともあるから、そういうのを機材でペペッと調整してくれたりもした。俺らはその行為を「科学」と呼んでる(笑)。


ライターM:今回のアルバムは試行錯誤の連続だったようですね。トラップにもトライしたとか。


Mummy-D:うん。俺、若い子がトラップのビートでいろんなことしてるのが好きだから自分でもトライしてみたかったんだよね。でもやってみたら「なんか俺、さむっ!」って(笑)。ビートは素晴らしかったんだけどね~。


前田:いやいやカッコ良かったですよ(笑)。でもアルバムのテンションには合ってなかったかもしれないですね。


編集Y:Dさんのトラップ、めっちゃ聴きたかったです(笑)。


Mummy-D:最近流行ってるタルい感じのラップが映えるダークめなビートで、2パターンくらいヴァースを書いてレコーディングしてみたの。あえてテンション下げてみたり、三連で頑張ってみたり。でもなんかわざとらしくなっちゃったというか。あの時は本当に不安しかなかった(笑)。


ライターM:Dさん自身はなんでトラップにうまく乗れなかったと思いますか?


Mummy-D:ラップのスタイルだね。あの感じはいつもトラップのフロウをやってる子じゃないとできないと思った。でもね、この感覚がわかっただけでも良かった。


印象的なパートが毎回サビとは限らない!


ライターM:リード曲の「Future Is Born」は1番と2番をつなぐブリッジ(「さあ、空に手を上げて…」)ができなくて苦労されたようですが、サビとかではなくブリッジが制作の鍵になるというのはどういうことなんですか?


前田:単純にヴァースとサビ、ヴァースとサビの繰り返しだと曲が単調になるんですよ。そこに異物が入ると、曲に新しい息吹が加わる。それがブリッジのこともあるし、ガヤだったりもするんですけど、「Future Is Born」の場合はあのブリッジが入ることで、静かすぎず暗すぎず、しかも勢いがあるという、ちょうどいい場所にたどり着けたという感じですね。


Mummy-D:例えば、ビヨンセの「クレイジー・イン・ラヴ」の「オッオ~、オッオ~♪」とかはサビよりも印象的じゃん?(笑) 「Future Is Born」は「オッオ~、オッオ~♪」が入ってない状態がずっと続いてたって感じ。それくらい大事なパーツだったんだよ。


ライターM:ブリッジは難産でしたか?


Mummy-D:最初はスクラッチを入れようと思ってたしね。1日のレコーディングが終わると、必ず日付は入ったラフミックスというのを作るのね。今日は宇多さんのヴァースが入りました。次の日は俺が歌詞をちょこっと直しました、みたいな。「Future Is Born」はすごい変遷があった曲で、そのラフミックスが20個くらいある。その過程でブリッジだけがずっと抜けてて。そこに、ある日試したものがバシッとハマったんだよね。


前田:僕は仕事柄ある程度曲の完成形をイメージしながら作業しているんですが、RHYMESTERのお二人の場合はそれが難しいですね。


Mummy-D:あのブリッジに関しては、歌ってて一番楽しいパートができたって感じだったな。それがたまたまヴァースとサビじゃなかったっていう。たまにそういうことがあるんだよ。


ライターM:宇多丸さんは「Future Is Born」が完成して「『このアルバム勝った!』と思った」と話していましたね。


Mummy-D:リード曲ができなくて困ってる時期だったからね。完成した時はもう迷わず「K点越えたね!これでいこう」となった。


取材・文 宮崎敬太

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