僕はファイターだけど、僕なりのヒップホップを見せたい。【木村”フィリップ”ミノルのdopeなラップトーク#6】

9月18日(月・祝)さいたまスーパーアリーナにて開催される<K-1 WORLD GP 2017 JAPAN~初代ウェルター級王座決定トーナメント~>に出場する木村”フィリップ”ミノル。今大会は1日に3試合を戦う過酷なスタイル<ワンデートーナメント>ということもあり、これまで以上にハードな練習を行っているという。

さて今回の取材は、試合直前の追い込み期間とぶつかってしまった為、延期も検討していたが、本人から「息抜きになるんでOKです!」とのありがたいお言葉をいただいたことにより、決行する事が出来た。木村ミノル、体もデカいが、心もデカい。加えて今回のインタビューでは、その志のデカさを十二分に感じさせていただいた。 収録3回目の前編となる今回もヒップホップヘッズはもちろん格闘技ファン必読の内容となった【木村”フィリップ”ミノルのdopeなラップトーク】じっくりとお楽しみください!


■自分が世界に合わせるんじゃなくて、世界が自分に合わせろ!みたいな奴がどの世界でも上に行く


ーミノルさんがフェイバリットアーティストについて語りまくる恒例のコーナーに移ってきましょう!前回はLIL WAYNEでしたが…。

ミノル:今回はウィズ・カリファ!


ーいつぐらいから聴き始めたんでしょうか?

ミノル:いつだろうなあ。最初はエミネムばっか聴いてて、その後は日本語ラップ聴いたりして、そのくらいのタイミングですかね。まあ本格的に好きになったのは結構最近。


ーウィズ・カリファって、2010年にリリースした大ヒット曲「Black & Yellow」で世に出たイメージを持ってる方が多いと思うのですが、実は結構活動歴が長いんですよね。

ミノル:あー、そうですよねえ。


ー最初の音源は2005年とか。ちなみに<ロスロラム>というLAのインディーレーベルに売り出された方なんですが、最近オーナーのベンジー・グリンバーグという方がウィズ・カリファと揉めちゃってますね。訴訟合戦的な。

ミノル:「ラッパーあるある」ですね。「訴えてナンボでしょ」的な(笑)


ーベンジーさんは、元々名門レーベルである<アリスタ・レコード>にいた方で、マック・ミラーとか、最近ではモッド・サンを売り出した、まあ有能なビジネスマンなんですよ。色んなことを計算し尽くしてやっているタイプ。まあそんな話は置いといて、ミノルさんが一番最初に好きになった曲を教えてください!

ミノル:入り口になったのはスヌープとの曲ですね。

「Young, Wild and Free」。 Snoop Dogg & Wiz Khalifa - Young, Wild and Free ft. Bruno Mars [Official Video]

ーこれは名曲っすね。前回紹介していただいたリル・ウェイン「ミラー」と同じく、ブルーノ・マーズが参加してます。 ミノル:ここから好きになっていった感じでしたね。


ー(冒頭の寸劇を見ながら)スヌープってなんか雰囲気が良いですよねえ。

ミノル: スヌープって、そこにいるだけで良いすよね(笑)。ラップしなくても存在感だけでもう全然OK。


ーこのヴィデオも割と計算されてて、やっぱり親子というか、師弟というか、ウィズ・カリファこそがスヌープの後継者なんだぞ的なノリを感じますよね。

ミノル:うん。まさに後継者。


ーちょっと体型も似てて。この曲はどういうところが好きなんでしょうか?

ミノル:この曲ってヒップホップ聴かない人でも好きだったりするじゃないですか?お馴染みの、という感じですかね。


ー確かに定番曲ですよね。ところでミノルさんにとってウィズ・カリファの魅力とは?

ミノル:やっぱり明るさですね。しかも明るさが中途半端じゃないのが良い。言葉に関してもすごくポジティブな想いがこもってる。なんというか「平和」について歌ってるんですよね。で、明るさの向こうに強さや生き様が見えたりもする。

リル・ウェインとは全く違った魅力がありますね。僕は中途半端に暗かったりする感じが好きじゃないんですよ。だったらエミネムとかリル・ウェインくらいまで振り切ってる方が良いなって。


ーこの曲にしても明るいですもんね。スヌープと何を話してるんでしょうね。すげえ下らない話してそうですよね(笑)

ミノル:絶対バカな話してますよ(笑)。この二人はライブでどっちが沢山吸えるか勝負してましたよね。ちなみにスヌープが圧勝してました(笑)


ー期待を裏がいらないバカですね!(笑)。では次の曲をお願いします!

ミノル:どうしようかな。じゃあ「We Dem Boyz」で。(鼻歌で)We Dem Boyz~♪

Wiz Khalifa - We Dem Boyz [Official Video]

ーどのヴィデオも、なんというかスモーキーですね。

ミノル:これも気持ち良いんだよなあ。街を歩きながらゆったり歩いてる感じが良いんすよねえ。


ーTシャツが映画『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のパロディだったり。ワンショットで撮って、長回し系ですね。

ミノル:子供が出てきたり、いろんな人と会って。流れもすごく良いんですよ。


ーフッド感がすごく良いですよね。

ミノル:「俺が街を代表して上がってやるぜ」みたいな。


ー実際そうなんでしょうね。地元ピッツバーグのシティカラーをモチーフにした「Black&Yellow」なんて、まさにそういうことを歌ってる曲だし。

ミノル:一般常識で考えれば「この文化はこの地区が強いから、そこに向けて発信しないと」「この層に目を付けてもらわないと」みたいになってしまうけど、このくらいのレベルになると誰かに媚びるんじゃなく「お前らが付いて来いよ」みたいなノリになるんでしょうね(笑)。自分が世界に合わせるんじゃなくて、世界が自分に合わせろみたいなノリに。けどまあ、どの世界でも、そういう奴こそが上に行くんでしょうね。


ー自分のオリジナリティを大切にして、変わらない事が大事だ、と。では次の曲を!

ミノル:3曲目は「NO SLEEP」。この曲は、さっき話に出たウィズ・カリファの明るさが全開に出てる曲ですね。歌詞も「俺についてこい。全部払うから、どんちゃん騒ぎしようぜ」みたいな感じなんですよ。良いすよね。


ーこれまでミノルさんは、割とシリアスなラッパーとかエモーショナルなラッパーを紹介してくれることが多かったんですが、ウィズ・カリファは本当に明るいですよね。タイミングで言うと、どんな時に聴いてるんですか?

ミノル:ウィズ・カリファは、調子が良い時ですね。聴くことでさらにテンションを引き上げる。リル・ウェインとかエミネムはピリピリしている時に聴くと落ち着くんですが、一回調子が上がったらウィズ・カリファ。気持ちを上げ切るんです。


ー感情の流れに逆らうんじゃなくて、その時の気持ちを増幅させるために使ってるんですね。

ミノル:僕のメンタルの作り方はそうですね。落ちたら徹底的に落とす。「リバウンド」つまり「反動」という言葉があるくらいだから。調子が悪くなるとずっとジムにいて、ダラダラ練習するんですよ。体が動かなくても、ひたすら続ける。それで何かしらの反動の起点となるポイントを見つけ出す。逆に調子が良い時はすぐに練習を止めちゃうんです。「調子が良い」という感覚を忘れないために。音楽もそうやって選んでいるような気がします。


ー落ちる時は底に落ちるまで、と。底を見れば、後は上がるしかないですもんね。

ミノル:ウィズ・カリファは、ポジティブな言葉が多いのも良いですね。単なる馬鹿騒ぎじゃない。だから見てて「こういう風になりたいなあ」って思うんです。売れた後もポジティブなメッセージを発信してる。あとは、「Black And Yellow」を挙げないわけにはいかないですね。

Wiz Khalifa - Black And Yellow [Official Music Video]


ー2億6千万再生!とはいえ先日再生回数世界一になった「See You Again」は30億再生。本当に動画ベースで成り上がって行った方ですよねえ。

Wiz Khalifa - See You Again ft. Charlie Puth [Official Video] Furious 7 Soundtrack 

ミノル:「Black And Yellow」のヴィデオは、ジュエリーの感じとかも最高。ヒップホップは、やってきた成果を全て見せつける感じも魅力的ですよね。


ージュエリーに興味ってありますか?

ミノル:もちろんあるんですけど、すごく変なこだわりがあって。めちゃめちゃ成功するまで着けないって決めているんです。僕、ジュエリーしてるイメージないでしょう?


ー言われてみれば全然ないですね!似合いそうなのに!

ミノル:ジュエリーはチャンピオンベルトと同じだと思っているんですよ。だから「上がりきった」と思うまでは、木村ミノルという人間が全世界で「凄い」と言われるまでは、着けないことにしてるんです。


ーチャンピオンになったら、ベルトとジュエリーでキメる、と。

ミノル:うん。いつか、こういうPVみたいなことするのは夢ですね。かっこいい。


■辛い思いをしてる人が「自分も頑張ろう」って思ってもらえるような試合がしたい。それが僕の役目。


ーちょっと話がズレるんですが、アーティストのPVに出演されたことってあります?

ミノル:三木道三さんのPVに出たことがありますね。


ーどういった経緯で出演したのでしょう?

ミノル:三木さんから電話が来て「新曲やるから出てくれない?」って。で、「いつ撮るんですか?」みたいな(笑)。


INFINITY16 Welcomez Dozan11 / 大仕事


ーそれはまたフランクな(笑)。それにしても結構ガッツリ出てますね。

ミノル:ですね。ノリで撮ったんですが(笑)。コンセプト的には「何かで頑張って

いる人を出す」という事だったらしいです。


ー撮影はどのような感じで進んで行ったのでしょうか?

ミノル:曲に合わせてシャドウをして、それを撮影して行く感じでしたね。控え室では三木さんにオリジナルマッサージをしてもらいましたよ。


ーそれも凄い話しかでてきてないですね(笑)。

ミノル:「僕、体が疲れてるんです」って言ったら、「ここをほぐせば良いんだよ!」って。でもこれがすごく痛いんですよ。「もうやめてください!」って(笑)。ちなみに三木さんはポルトガル語を話せるんですよ。奥さんがブラジルの人なんですよね。そんな縁もあって、という感じですね。


ーこれからPVに出る機会も増えていきそうすよね。このアーティストのヴィデオに出たいとかってあります?

ミノル:BADHOP的なところですかね(笑)


ー完全にラブコールですね(笑)。

ミノル:あ!そういえば、ウィズ・カリファで、もう一本だけ紹介したい動画があるんですよ!最近、エミネムにしろリル・ウェインにしろ、曲だけじゃなく人柄を見たいっていう思いが強くて、ドキュメンタリーなんかもチェックしているんですが、ウィズ・カリファの「Day Today」シリーズはオススメです。ドキュメンタリーというよりはVlog的なものですね。

Wiz Khalifa - DayToday: Makin Plays

ー見所は?

ミノル:ずっと吸ってますね。そして、ずっと笑ってます(笑)。


ー(笑)。良い表情になってますね(笑)

ミノル:最近すごくハマってしまって。自然体で作ってない感じがいいんですよね。割とちょいちょいアップされてるのでチェックして欲しいです。ラッパーの私生活が見られますよ。

そうだ!ラッパーの私生活といえば、HIPHOP専門ラジオ局<WREP>でやってるBADHOPのラジオ「CHOOSY TUESDAY」が超面白いですよ。


ーこれ面白いんですよね!

ミノル:2WINの2人って、Pablowくんが割と真面目で、YZERRくんが適当でみたいなイメージじゃないですか?この番組ではYZERRくんが持ってる良い意味での適当さが光ってますね。曲では見せない感じが出てますよ。


ーどんな感じなんですか?

ミノル:ファンから割とくだらない感じの質問とかが来て、それを拾ってくんですが、YZERRくんの答え方が良いんですよ。気が利いてて面白い。少年院の話とか晋平太戦(※『フリースタイルダンジョン』)の振り返りも良かったすね(笑)。このラジオは超面白いですよ!


ーさて、最後にヒップホップファンに向けて9.18<K-1>への抱負とメッセージをいただければと思います!

ミノル:最近のK-1はアイドルコンサートみたいになっていて、そういう感じの声援が増えてます。「いけいけー」とか「殺せー」みたいなことを、軽く言うじゃないですか?そういう声援からは、人としての痛みや人生の重みを感じないんですよね。

「ワーキャー」的な声援も嬉しくないわけじゃないですよ?でも、どれだけそういう声援が増えても「僕は君たちのために戦ってるんじゃない」と思っている。本気で頑張ってる人や苦しんでいる人にメッセージを送るのがファイターだと思っているので。

僕はファイターですが、僕なりのヒップホップを見せたいんです。マジで辛い思いをしてる人が見て、声が出ないくらいの。「自分も頑張ろう」って思ってもらえるような試合がしたい。それが僕の役目だと思っています。死ぬまで、その役目を全うしたいと思うんです。


ー戦いの表面しか見てない人が増えているんですね。

ミノル:観客だけじゃなくて選手にも問題があるように思います。格闘技って勇気を与えるものだと思うんです。僕らにしか出来ないことをやらせてもらっている。僕等が見せることが出来るのは、「挑戦、志、生き様」です。でも最近は挑戦する気持ちや、葛藤を見せることの出来る選手が減っているような気がするんです。


ーどういうことでしょうか?

ミノル:僕は今まで「かませ犬」と言われるような選手と試合をしたことは一回もないし、名前のある手強い奴と試合をしてきました。「無謀だ」と言われながらも総合にチャレンジした。

他の世界で活躍してる人が総合に参戦する時って、相手が弱かったり、あとは例えば元キックボクサーだったり、まあ楽な試合だったりするんです。

でも僕は総合一発目で子供の頃から見てるような名前のある選手と試合をして、まあ負けてしまって。すごくモヤモヤしたりもしました。でも、あくまで挑戦は続けていたんです。

今回の試合では、そういうモヤモヤした過去を、勝つことで正当化する瞬間を見て欲しいです。「それを見せられるのは僕しかいない」って、最近確信したんですよ。


ーまさに本質を見て欲しい、と。木村さんはヒップホップに人間の本質みたいなものを見出してるわけじゃないですか?

ミノル:そうです。だからリングでは、僕が見せなきゃならない。格闘技は好きです。でも、心に来るものがないと帰った後に良い気分になれない。試合が終わった後も、良い意味で「引きずってもらえる」試合がしたいですね。


ーそういう思いでリングに立っているんですね。木村さんの試合を見たら、格闘技に詳しくない人でも、何か感じ取ることが出来るんじゃないかなと思います。

ミノル:もしかすると、格闘技に詳しくない人の方が、見えて来るものが多いのかもしれませんね!楽しみにしててください!

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