【「ゲットダウン」パート2公開記念】KANDYTOWNのIO、DONY JOINT、YOUNG JUJUが語る「ゲットダウン』


ヒップホップ黎明期の1977年、ニューヨーク・ブルックリンで懸命に生き抜く少年たちの姿を描いたNetflixオリジナルドラマ「ゲットダウン」。丹念な時代考証に基づいて、ヒップホップはもちろん、当時のニューヨークを取り巻くさまざまなカルチャーをストーリーに巧みに折り込んでいるのが特徴だ。しかもボーダーレス化が進んだ現在のヒップホップシーンの流れも踏まえているので、1977年を描いていながら2017年の現在でもフレッシュに楽しむことができるドラマに仕上がっている。

今回はKANDYTOWNIODONY JOINTYOUNG JUJUの3人に、「ゲットダウン」を独自の視点から語ってもらった。


メンバーの問題はみんな自分たちの問題だと思ってる

ーー「ゲットダウン」の面白かったところを教えてください。

YOUNG JUJU 俺はマイリーンがシンガーとしてレーベルと契約するやりとりの部分が面白かった。裏方の人がいろいろ動いてくれるんだけど、マイリーンは「この人は私のために何をしてくれてるのだろう」って感じてるんですよ。そこは今の自分と重なったし、いつの時代も一緒なんだなって思いました。あと主人公たちのグループ「ゲット・ダウン・ブラザーズ」がみんなで集まって曲作りをしてるシーンを見てて、みんながそれぞれグループのメンバーをケアしあってるところが良かった。当時のブロンクスはいわゆるゲットーなんだけど、そこから抜け出そうとするポジティヴなバイブスは大事だと思いましたね。

(ヒップホップチーム「The Get Down Brothers」のライブシーン)

DONY JOINT 俺も「ゲット・ダウン・ブラザーズ」の仲間意識にはグッときました。徐々にチーム感が出てくる感じとか。一人ひとりが個別に動いてるんだけど、クルーの一員でもある感じ。メンバーの問題はみんな自分たちの問題だと思ってる。

IO 俺は内容よりも映像とか質感が興味深かった。編集で映像の切り替わるタイミングにちょっとだけノイズが入ってたりするんですよ。あと色。「ゲットダウン」を観てると本当に70年代を観てるような感覚になる。例えば「グッドフェローズ」は1990年に公開された映画だけど、60〜70年代当時に作られたような感じがする。そういう作品ってなかなかないと思うんです。「ゲットダウン」にはそういう色がある。暴動や火災のシーンは当時実際に放送されたニュース映像を流してたりするから、テクニック的な部分もあると思うけど、それだけじゃない感じがしましたね。

ーー「ゲットダウン」の登場人物で感情移入できるキャラを教えてください。

YOUNG JUJU ブックス(エゼキエル)の葛藤には感情移入しましたね。彼女も大事だけど、自分が楽しいほうに流されちゃったり。自分の目標はしっかりあるけど、誘われたら遊びにいっちゃうみたいな。でもキャラで言ったら、あの小ちゃいブーブーですね。ひょうきんでダンスが好き、みたいな。俺もあの子みたいに楽しい時は先頭切って踊り行っちゃいます。

DONY JOINT 「ゲット・ダウン・ブラザーズ」のメンバーだったら、俺はララかな。あの冷静な感じには共感しました。

IO 俺はパパ・フエルテですね。

(マイリーンの叔父、パパ・フエルテ/Jimmy Smits)

ーー誰でしたっけ?

IO マイリーンの叔父さん。あの人は一番カッコいい。ああいう叔父さんになりたい(笑)。


パパ・フエルテのファッションがカッコいい

ーー「ゲットダウン」にはいろんな見所があると思うのですが、みなさんが特にフレッシュだと感じた部分を教えてください。

IO NASのラップですね。しかも和訳が付いてる。もうそれで十分ですよ。だってNASが毎回違うラップを書き下ろしてるんですよ。本当に贅沢。ドラマの冒頭のシーンはいつも楽しみでしたね。

YOUNG JUJU 俺は「ゲットダウン」のサントラが好きでしたね。ソウルとかファンクとかいっぱい入ってて、普通にドラマを観てても「この曲なんだろ?」って気になりました。

DONY JOINT 俺は、ヒップホップが誕生した当時の時代背景を今の若い人にも観やすい形でドラマにしたということが一番興味深かった。その時代を描いた作品って、今までは「ワイルドスタイル」くらいしかなかった。あと「ウォリアーズ」

ーー「ゲットダウン」は今まで描かれてこなかった「ウォリアーズ」と「ワイルドスタイル」の間の時代の話ですからね。

DONY JOINT そうですね。「ウォリアーズ」は70年代半ばから後半で、「ゲットダウン」は70年代後半から80年代初頭。で、「ワイルドスタイル」に繋がっていきますよね。「ゲット・ダウン・ブラザーズ」の子たちは最初「ウォリアーズ」みたいなファッションだったのも良かった。ソウルやファンクの影響もあるんだけど、「ウォリアーズ」みたいにチームごとのカラーもあって。そこから徐々に「ワイルドスタイル」的なオールドスクールのヒップホップファッションになっていく。

IO 俺はパパ・フエルテのファッションもカッコいいと思った。ピンキーリングとか着けてて。「ゲットダウン」の登場人物の中で、一番したい格好を選べと言われたら間違いなくパパ・フエルテを選びますね。


YOUNG JUJU スーツスタイルはいいよね。俺もクラッシー(高級感)なスタイルが好きだから、パパ・フエルテはカッコいいと思った。

ーーパパ・フエルテのファッションは完全にノーチェックでした(笑)。

IO いい歳を重ねた大人じゃないと似合わないスタイルだと思いますね。


困った時はいるよっていう関係性

ーー「ゲットダウン」ではヒップホップがディスコミュージックのカウンターとして登場する様子が描かれていて、そこに驚きました。

YOUNG JUJU それは俺も驚きましたね。

(ディスコ界のプリンス・キャデラック)

IO 当時の若い人、これからヒップホップをやろうとしてたような人はそう思ってたんでしょうね。キャデラックが「これが男の音楽だ」ってブックスたちにディスコミュージックを聴かせるシーンがあったけど、それが象徴的だと思うんですよ。ディスコってそういうところだったというか。

ーー実はディスコミュージックがギャングたちと密接に結びついていたということも非常にサラッと描かれてますよね。

DONY JOINT 俺はヒップホップを最初に好きになって、そこからソウルを聴くようになったんですよ。「ゲットダウン」ではソウルとかファンクに代表されるディスコミュージックは「ダサいもの」として描かれているけど、最初のB-BOYたちはその「ダサいもの」を自分たちで「カッコいいもの」に解釈し直してしまったというのがすごいと思いました。時代的にも決して簡単なことではなかったと思うけど、それを自分たちがやってることはカッコいいと信じる自信や情熱で成し遂げちゃうという。わからせ方がアツかったですね。

ーーあと「ゲットダウン」を語る上で欠かせないのは仲間の存在です。みなさんにとって仲間とはどういったものですか?

(The Get Down BrothersとNotorious 3のライブバトルシーン)  

YOUNG JUJU ……難しすぎる質問だな。

DONY JOINT 簡単に言っちゃえば、体の一部みたいな感じです。仲間がいるからいいバイブスも感じられるし、モチベーションも保てる。だからこそみんな1人でそれぞれやっていけるようにならなきゃいけないと思うんですよ。

IO 俺にとって仲間は友達ですね。仲間がいなかったら、自分も存在しない。何もないって感じです。草原みたいな。……。なんだろう、あまりにライフすぎて考えたこともないんですよ。

YOUNG JUJU 俺にとって仲間はいてもいなくてもどっちでもいいものなんじゃないかと思う。見えないチェーンというか、目に見えてお互いを縛る必要がないのが仲間。いつ会っても「あの感じだよね」ってなれる。俺は自分が楽しい時に(仲間が)いてほしいとは思ってなくて、むしろ死ぬほど辛い時にいる存在が仲間だと感じるんです。だから仲間たちが楽しんでる時は勝手にやってて良くて、それに対してはお互いにジェラスしない。「あいつ、最近調子良さそうだな」って遠くから言える関係性。

ーーそんな濃い関係性の友達がたくさんいるというのはどういう感覚なんですか? 親友と自分みたいな1対1ならなんとなくわかるんですが……。

YOUNG JUJU そういうことを細かく考えると破裂しちゃいますよ。

DONY JOINT 無言でいられる関係性というか。

YOUNG JUJU そうそう。別に仲間が何をやっててもいいし、何を考えててもいいけど、裏切られなければそれでいい。だから俺が話したいことがあれば話すし、相手は話すことがなければ別に黙ってればいい。無言でも、会わなくても問題ない。だけど困った時はいるよっていう。KANDYTOWNはとくにそうです。みんなそれぞれが明日何してるかなんて知らないけど、集まった時は話す。テンションが高い時は飲みに行ったりもします。でも基本的にみんなローだから、普段は会いませんけどね。

IO だから友達なんですよ(笑)。難しく考える必要なんて全然なくて、仲間は友達の延長なんです。そもそも俺らだって、KANDYTOWNが全員揃うことなんて曲作りとかミーティングとかでもない限りほとんどないですよ。

YOUNG JUJU IOくんとDONYくんはみんなで集まってもほとんど喋りませんけどね。そういえば、この前俺も含めて3人で飛行機の移動があったんですけど、最初から最後まで誰も一言も話しませんでしたから(笑)。

IO 変に気を使う必要はないから。

ーーなるほど、だから内輪揉めとかもないんですね。

YOUNG JUJU うん、俺らは基本的にみんなに任せるよってスタンスの人が多いと思いますね。むしろ俺がエゴがないんです。むしろ俺が一番文句とか意見言うんじゃないかな。それで「ああ、俺がうるせえんだな」って反省するっていう(笑)。そういうところも俺は「ゲット・ダウン・ブラザーズ」のブーブーみたいな感じかも。


TEXT:宮崎敬太

PHOTO:小原啓樹

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