ゆるふわギャング、初ワンマン・ライヴ “ドラマティックかつ美しい”最高のヒップホップ

ゆるふわギャング、デビュー・アルバム『MARS ICE HOUSE』を引っさげての初ワンマン・ライヴが行われた。ステージ後方のブース内にバックDJのWardaaが登場し、Sophieeの声によるリマーカブルな<ゆるふわボイス・タグ>が流れた直後、「Go! Outside」でステージが開幕。

文字どおり元気よく飛び出してきた二人は、客席後方からでも分かるほどに余裕と自信を保っているように見えた。スクリーンに映し出された映像も相まって、まるでステージの上は二人のワンダーランドのような雰囲気。冒頭に続いてパフォームされた「パイレーツ」で歌われる<We’re Pirates 奪いに来た>というリリック通り、瞬時に観客の心を奪って行き、続く「Sad But Good」ではオーディエンスの合唱もバッチリで、特に、キワどい歌詞も一緒に合唱する様子は本当に痛快!

そして、アルバムの中でも最もドープな一曲「YRFW Shit」では、特にSophieeのディーヴァ然としたスピット具合が非常に印象的だった。この夜、唯一のゲスト・ラッパーとして登場したLUNV LOYALを迎えた「グラセフ」を経て、彼らの名刺代わりでもあるスマッシュ・ヒット曲「Dippin Shake」「Fuckin’ Car」を続けて披露。スタンドマイクを用いた「Hunny Hunt」や、Sophieeのソロ楽曲「High Times」では特に二人の表現力の豊かさを感じたほどで、特にこのパートではSophieeの繊細かつ大胆なパフォーマンス・スキルにうっとりしたオーディエンスも多かったのではないかと思う。

そして、ライヴも折り返したところで流れてきたのは、なんとスーパーカーの「Free your Soul」。以前より好きなアーティストとしてスーパーカーの名前を挙げていた二人だったが、まさかこんな大胆な形で彼らをフィーチャーするとは!気持ちよさそうにステージの上で自分たちのフェイヴァリット・チューンに身を委ねる二人は、タイトル通り何かから解放されているように見えたし、抱えきれぬほどの多幸感が溢れているようにも見えた。そこから、アルバムのリード曲「Escape To The Paradise」へ。誇らしく自分のヴァースをキックするRyugo Ishidaは間違いなくロックスターの顔付きになっていたし、あの瞬間、オーディエンス全体の一体感も最高潮に達したのではないかと思う。まさに、ゆるふわギャングと観客とが、何か一つの同じものを見ているようなヴァイブスを感じた瞬間だった。

「Don’t Stop The Music」で本編を終えた二人だが、アンコール・パートでは先にRyugo Ishidaのみが登場。昨年発表されたEPから「東京 One Day」をパフォームした。<ここは東京 渋谷センター街 人混みをかき分ける Every night>という一節から始まるこの曲だが、今、まさに渋谷のセンター街で大勢のオーディエンスを前にしてワンマン・ライヴを成功させているリアリティと歌詞の世界観との対比が、否応なくエモーショナルな空気を生み出す。続く「大丈夫」はアルバム収録曲の中でも最もパーソナルな一曲。最初のヴァースを歌うRyugo Ishidaは途中で感極まり、声を詰まらせ涙を拭いながらのパフォーマンスとなった。途中でSophieeを抱き寄せ、<大丈夫>と歌う二人はドラマティックかつ非常に美しい姿だったし、彼らの抱える(そして抱えてきた)ドラマ全体が、ゆるふわギャングの魅力であるということを再認識させられたのだった。

最後は「Sunset」で終幕。まるで終わりなく無限に広がり続ける夢を見ているかのような二人のライヴだったが、極めてミニマムな二人の日常を描いた一曲で締める、という演出も粋に感じた。最後はステージ上に二人だけが立ち、深く長い一礼でライヴが終了した。

拍手と歓声が鳴り止まぬ中、「ありがとうございました、また会いましょう」とだけ言って去っていくRyugo Ishidaが何より潔く、これほどにアーティストの成長をまざまざと見せつけられたことは無いとうくらい、充足感に満ちた最高のヒップホップ・ライヴだった。


テキスト:渡辺志保(BlackRiverMobb)

photo:Yusuke Yamatani

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