防弾少年団(BTS)がアツすぎる 韓国アイドルヒップホップが面白い理由

■防弾少年団、圏外から大賞をかっさらった注目株

いま防弾少年団がアツい。EXO以降、韓国では新しい有力なボーイズグループが誕生していなかった。正確に言うと誕生していたが大ブレイクはできなかった。韓国で最も有力な音楽事務所はEXOが所属するSMエンターテインメントだ。そのあとをBIGBANGのYGエンターテインメント、2PMらのJYPエンターテインメント……と続いていく。

この順列はアイドルの勢力図にそのまま反映される。EXOが2013年に「Growl」で特大ブレイクして以降、そのあとを継ぐのはYGやJYPから現れると誰もが思っていた。しかし昨年、韓国のミュージックアワード「2016 Mnet Asian Music Awards」(通称「MAMA」)で、最優秀アーティスト賞を防弾少年団(BTS)が受賞した。彼らはSMでもYGでもない、Big Hitエンターテインメントという事務所に所属している。


・방탄소년단 (BTS) ‘피 땀 눈물 (Blood Sweat & Tears)’ MV


■韓国の変態R&Bシンガー・パク・ジニョンの系譜

Big Hitエンターテインメントは、韓国の有名音楽ロデューサーのパン・シヒョクが代表を務めている。彼がこれまで手がけてきたのは、god、2AMなどJYPに所属するアーティストたち。JYPは自身も現役シンガーと活躍するパク・ジニョンの音楽事務所で、2PM、Miss A、GOT7、TWICEら人気アーティストが在籍している。

彼、彼女らの特徴はR&Bから強く影響を受けているということだ。これは事務所代表のパク・ジニョンのスタイルによるところが大きい。コミカルにボースティングする「Still Alive(살아있네)」や、ヒップへの愛情と儒教的価値感をミックスした「Who's your mama?(어머님이 누구니) (feat. Jessi)」などを観てもらえれば、言ってることはなんとなくわかってもらえるはずだ。なおPVには日本語対訳も付いているので、ダンスとともにリリックの秀逸さも味わってもらいたい。話が逸れたが、とにかくパン・シヒョクはそんなJYPで頭角を現した音楽プロデューサーなのだ。


・J.Y. Park "Still Alive(살아있네)" M/V

・J.Y. Park "Who's your mama?(어머님이 누구니) (feat. Jessi)"


■「ラップなめんな」ヒップホップを愛する防弾少年団

防弾少年団のリーダー・RAP MONSTERとSUGAはもともとアンダーグラウンドで活動するラッパーだった。そのためデビュー当初はアイドルとして振る舞うことに、かなり戸惑ったという。彼らは事務局のプロデューサー・Pdoggとともにアルバムの楽曲制作に深く携わっている。デビュー曲となった2013年の「No More Dream」はアイドルの曲とは思えないほど低音が強烈なトラップサウンドだった。しかも同曲は「90年代ヒップホップの再解釈」というテーマで制作されたとのこと。韓国のアイドルシーンでラップは、歌が上手くないメンバーの担当というのがお決まりだったが、BTSはそんな流れに反発するかのように三連譜のフロウなどを取り込んでいる。さらに1stシングル「2 Cool 4 Skool」に収録されている「We Are Bulletproof Pt.2」では「歌えないからラップやらされてるお前らに / ラッパーというタイトルは贅沢だぜ」とも歌っている。こんな挑戦的な内容が許されたのは、やはり代表がJYP仕込みのパン・シヒョクだったからに他ならないだろう。


・[HOT] BTS - No More Dream, 방탄소년단 - 노 모어 드림 Music core 20130615


■脱北者ラッパーも登場するヒップホップオーディション番組が人気に

防弾少年団は「BTS」の通称で親しまれている。BTSがデビューした当時、「B」から始まるアイドルグループがとにかく多かった。B1A4、Boys Republic、BTOB、B.A.P、Block B……。ここにBIGBANGやBEASTの活動タイミングが重なると、もう音楽番組では誰が誰だか区別がつかない有様になっていた。しかも防弾少年団は初期に学生服を着て活動していたため、これまた制服でブレイクしたEXOの二番煎じと思われる不運もあった。しかしもともとミュージシャン気質の強かった防弾少年団は、逆境にもめげず様々なイベントなどに出演してパフォーマンスに磨きをかけていった。

そんな中、ヒップホップオーディション番組「SHOW ME THE MONEY」が韓国で大ブレイクする。これはプロ・アマ問わず参加でき、超過酷なオーディションを通過すると、今度は鬼審査員だったプロデューサーとタッグを組んで楽曲制作を行い、そこでまたバトルを繰り広げるという内容。このシーズン3でYGに所属するBOBBY(iKON)がアイドルラッパーにもかかわらず、アングララッパーを倒して優勝し、「SHOW ME THE MONEY」は一躍有名になった。言葉はわからなくても、なんかすごい感じは下のYouTubeで伝わるはずだ。ちなみに「SHOW ME THE MONEY」には北朝鮮から韓国へ脱北したラッパーも出演している。


・BOBBY – '가드올리고 BOUNCE' 0904 Mnet SHOW ME THE MONEY 3


■BOBBYが同業アイドルラッパーをディス?「ヘタクソ」

このBOBBYというアイドルはとにかく悪ガキ。なんと「SHOW ME THE MONEY」で(以下、M-WAVEより引用)「本当の男みたいに放蕩(バンタン)に」「俺は放蕩(バンタン)だ。俺を怪物と呼べ。俺は自称したことない。俺は防弾ガラスの前でウォンビン」(引用ここまで)とRAP MONSTERをディスしたのだ。

ちなみに韓国で防弾少年団はバンタンと呼ばれている。ヒップホップ大好きRAP MONSTERがこれに反応しないわけはなく、(以下、引用)「ガードをあげてついてきてみろ。ラッパー音痴ラッパー」(引用ここまで:http://mwave.interest.me/jp/kpop-news/article/82866/)と自身のミックステープ「RM」でアンサー。しかも同年2014年の「MAMA」でBOBBYがこのディス曲を披露し、しかもRAP MONSTERも「RM」をプレイして大きな盛り上がりを見せた。そんな流れもあり、韓国でもアンダーグラウンドだった本格的なヒップホップが徐々にお茶の間に侵食してきたのだ。


・[STAR ZOOM IN] Dok2 · The Quiett · BOBBY 'YGGR', The Team Illionaire Reunited! 160511 EP.83

・2015 MAMA [Boys In Battle] BTS vs BlockB (2014 MAMA) 151127 EP.5


■RAP MONSTERとBOBBYのプロレス

防弾少年団はこのビーフで、玉石混交の頭文字「B」アイドルグループの団子状態から抜け出すきっかけをつかんだ。売られた喧嘩をエンターテインメントで応えて、ヒップホップの底上げにも成功した。

もともとアイドルとしての人気もあり、アーティストとしての下地もあったため、防弾少年団はさらにブレずヒップホップ路線を貫いた。そして事務所がポピュラーミュージックとしてのバランスをとった。それが2016年に結実。「2016 MelOn MUSIC AWARDS」でアルバム「WINGS」が「今年のアルバム賞」を受賞し、続いて「MAMA」で防弾少年団は最優秀アーティスト賞の栄冠に輝いた。また「WINGS」は2016年10月29日付のBILLBOARD 200で26位を獲得。これは韓国アーティストとしては最高のチャートアクションとなった。あくまでヒップホップを貫いて栄冠を手にした防弾少年団。BOBBYは現在WINNERのMINOとのユニット・MOBBでも活動している。こちらはiKONよりもよりヒップホップ色の強いグループなので、防弾少年団とさらに凌ぎを削りあってもらいたいものだ。


・BTS ‘Not Today’ MV

・MOBB - '붐벼(FULL HOUSE)' M/V

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