YUKSTA-ILLインタビュー「MCバトルがカッコ悪いものになって、戻る気が無くなっていった」(前編)

東海シーンの精鋭が集まるクルーRC SLUM/SLUM RCの一翼を担い、近年はそちらのリリースでも大いに注目を集めるほか、DJ RYOWやtha BOSS(THA BLUE HERB)、仙人掌のアルバムに客演を果たすなど活動が続くYUKSTA-ILLが、ソロとしては約5年ぶりのセカンドフル「NEO TOKAI ON THE LINE」を完成させた。ISSUGIや仙人掌、MASS-HOLEら同い歳のMC達で結成した1982sの動きも期待される彼に、これまでの歩み含め聞いた。 


――かつてアメリカに住んでいた経験があるそうで。  

YUKSTA-ILL:高校時代から6年ぐらい。ペンシルベニア州に住んでたんですけど、ニューヨークも近かったです。 

――日本のヒップホップとの出会いもその頃で、初めて聴いたアルバムはZeebraさんの「THE RHYME ANIMAL」だったとか。 

YUKSTA-ILL:バスケが好きだったんですけど、日本からバスケの雑誌送ってもらって読んでて。その雑誌にジャパニーズヒップホップの特集コラムみたいなのがあって、毎回一人にスポット当てて紹介する感じのやつ。その第一回がZeebraで、確か第二回がYOU THE ROCK★、第三回がDEV LARGEだったんですよ。向こうのヒップホップは大好きだったんですけど、日本にこんなのあるんだみたいな。しかも「THE RHYME ANIMAL」に入ってる「I’M STILL NO.1」の2ヴァース目でバスケットのことをラップしてると思うんですけど、そこで韻とかもわかって。逆に韻のこととかあんま意識せずに聴いてたから、向こうでラップ聴いてても。  

――へえそうだったんですね。じゃあ最初にラップを始めたのもやっぱり日本語ですか? 

YUKSTA-ILL:JAY-Zのサード「VOL.2... HARD KNOCK LIFE」らへんがど真ん中で、その時期ぐらいに自分もラップしたいと思ったんですけど、始めたのはたぶん日本語だったと思います。向こうでも実はやってたんですよ、クラブイベントとも言えない小さいパーティとかで。向こうの奴も調子いいから、「お前日本人だから日本語でラップしろよ」みたいに言われて、日本語でずっとラップしてたら「何言ってっかわかんねえから英語でやれ」とかそういうのがあったり(笑)。フリースタイルもその頃からやってて。 

――後のMCバトルへの出場に至るルーツはそこですね。その後、帰国したのが2001年あたりだそうですが。 

YUKSTA-ILL:それこそ向こうにいる時にOZROSAURUSの「Young Gunz」でM.O.S.A.D.を知って、日本戻ってきたらなんか怖そう、みたいな(笑)。三重に名古屋からいろんな噂が流れてくるわけですよ、武勇伝的な、どこまでホントかわかんないぐらいの。それで怖いもの見たさでクラブ行くみたいな、当時は。 

――その当時、周りに音楽を共有するような仲間はいたんですか?

 YUKSTA-ILL:帰ってきて一番始めに知り合ったのが「MINORITY POLICY」(‘15年リリースのミックスCD)のミックスをしたKOKIN BEATZ THE ILLESTなんですけど、周りには他にいなかったですね。ただでさえ当時はバトルも今ほど流行ってなかったし、名古屋ではちょっとあったかもしんないけど、それもアンテナが低いから気づいてないし、フリースタイルをKOKINちゃんに一方的にぶつけるみたいな。それで彼は音作るんで、なんかやろうよってなったのがB-ZIK(KOKINと彼のユニット)なんですよ。初めて名前載ってイベントに出たのもB-ZIKすね。 

――それから時を経て、TYRANTの活動が始まるわけですね。 

YUKSTA-ILL:B-ZIKとして3年ぐらい三重でずっとやってて、昔から知ってるマイメンDJ BLOCKCHECKからこういう奴がいるから名古屋でみんなでやろうって誘いを受けて、それで会いに行ったのが現RC SLUMのボス、ATOSONEでした。彼が名古屋でやってるS.M.S.C.とは別の場所でNOSEDIRTって服屋を当時やってて、そこにみんなで集まったのが始まり。不特定多数な感じではあったけど、基本的に三重の奴らで形成されていたのがTYRANTでしたね。  

――実際、TYRANTについては3曲入りの「KARMA」くらいで、あとはまとまった形でグループの音源が残ってませんが、その後どうなったんですか?  

YUKSTA-ILL:TYRANTはまあ住所みたいな感じです。自分もまだTYRANTだと思ってるし、同じ地元の鈴鹿からバッチリやってるMEXMANもTYRANTだし、でももう動いてない奴もいるしって感じですね。MC4人とDJ BLOCKCHECKがステージ上での本来の形で、勢力的に動いた期間が3年ぐらいなんですけど、みんないろんな事情があって足並みを揃えることが難しくなってしまった。俺的にTYRANTに関してすげえ悔やまれるのが、全員揃った完全な状態でのTYRANTを東海地方外の人に見せれなかったことですね。 

――今回の「NEO TOKAI ON THE LINE」に収録された「STILL T」は、そうしたTYRANTへの思いを形にした曲ですか? 三重の風景とともにTYRANTのメンバーHIRAGENさんの傑作ソロ「CASTE」も歌詞に挙がってますが。  

YUKSTA-ILL:そうですね。HIRAGENの曲で〈どんな状況でもしぶとくヒップホップ〉みたいなリリックがあるんですけど、そこは胸にしまってます。  




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