2003年「B BOY PARK」から十数年…Meisoインタビュー「自分たちが好きな90’sヒップホップを現代にどう表現するか」

Meisoがニューアルバム「轆轤」(ろくろ)をリリースした。LOOPを連想させる「轆轤」という言葉を冠した本作は、原点回帰をテーマに制作された。Meisoといえば、“外人21瞑想”として「B BOY PARK MC BATTLE 2003」を制したことでも知られている。そんな彼によって表現された新作「轆轤」は、詩的で、知的で、スキルフルで、攻撃的だ。2003年の「B BOY PARK」から十数年。ヒップホップに対する感情が何周も回りにまわったMeisoに話を訊いた。


方程式ではなく、インスピレーションから生まれる躍動感

ーーMeisoさんは伝説となった「B BOY PARK MC BATTLE 2003」に外人21瞑想として出場して優勝しているわけですが、現在のフリースタイルブームはどう見ていますか?

Meiso:今のバトルブームについてそこまで詳しくはないですが、当時のバトルは今よりも殺伐としてて、すごくヒリヒリしてたんですよ。最近バトルの人気が出てきた背景には、そういうヒリヒリしたものだけではない、インテリジェンスをきちんと伝えられる人が増えてきたから、というのがあると思う。「これだったら面白いな」「日本語で新しいことやってるな」「詩的に面白い」「頭の回転すごいな」みたいな。当時はヒップホップ=オラオラ系だったし。

ーー実際復帰してみた感想は?

Meiso:前に比べて「この人かっこいいな」って思える人が増えましたね。僕は、技を極めた上で、自分の中で瞬間的に生まれる爆発力を使って戦ってるような人が好きです。最近はバトル自体が増えてきたし、YouTubeに動画もある。バトルで勝つための教科書が増えたと思うんです。でも僕はそういう方程式のようなものを使った計算高いラップではなく、一瞬のインスピレーションから生まれた躍動感あるラップをバトルで楽しみたい。

ーー「Double Fresh」に参加している言xTHEANSWERさんは、「高校生RAP選手権」の自己紹介映像でMeisoさんから影響を受けたことを公言しています。

Meiso:実は言xTHEANSWERくんのバトルをそんなに見てなくて。でも彼がシーンに登場した時、ラップはキレッキレで、全てを舐めてる感じがしたんですね。自分も当時は、似たようなメンタリティでバトルをやってた。だから共感するところがあったんです。

ーー今回のアルバムは全体的にスキルフルな作品ですよね。

Meiso:そうですね(笑)。 でも、 僕としてはスキルのアピールより、目標はその先でした。自分の中にあるヒップホップの初期衝動をいかに高いレベルで表現できるか。スキルはそのための乗り物でしかないと考えてます。

ーー英詞と日本語詞の曲を混在させたのはなぜですか?

Meiso:できるからです。自分にできて、他の人にできないことがあるならやらないと損だと思いました。これまでは日本語での表現にこだわってきたところがあるんですよ。だから今回は別のことをやってみようと。「Universal Language」は、バイリンガルである2人のラッパーが1つの言語という壁を超えたスタイルでやろうとした曲です。


何回も聴いてやっと知恵の輪を1個外せる

ーー6曲目の「A2Z」を最初聴いた時、何を歌っているかわからなかったんです。でも歌詞カードをよくよく読んでみると、アルファベットのAからZをリリックに組み込んだ言葉遊びなんだとわかりました。

Meiso:そうですね。「A2Z」はワードプレイ(言葉遊び)です。好きなんですよ。

ーーアルバムのそこかしこに言葉遊びが隠れてるんでしょうけど、全部は拾いきれませんでした。

Meiso:例えば「轆轤」という楽曲の「前後 北東南西」というラインの「南西」は、ヒップホップ的な「ナーセーン?(You know what I'm saying?)」って歌ってて、英語と日本語の言葉遊びをしてるんです。僕は普段「ナーセーン?」とかあんまり言わない(笑)。でもそういうことを言ってるニューヨークの90’sヒップホップにすごく影響を受けてるから、そこをストレートに、かつ自分らしく表現したかった。

ーー過去の焼き直しではなく。

Meiso:そうです。あと「轆轤」では、英語と日本語で両方意味のある音を使ってみようと実験してるんです。自分の歌詞を分析するのは嫌なんですが(笑)、最初のライン「ナレッジが鍵なら問題ないi got it」の「i got it」は「上がれ」なんです。それが次の「”上”に降りしきる雨粒のカーテン」というラインに続きます。

ーーおお!最近はわかりやすいフリースタイルに接する機会が多いから、こういった言葉遊びはすごく新鮮でした。「こういう技の見せ合いもある」というか。

Meiso:何回も聴いてやっと知恵の輪を1個外せる、そんな曲を作るのも、アーティストのこだわりだと思うんですよ。でも、今回のアルバムでそんなに難しいことをやってるつもりもなくて。ヒップホップの言葉遊びに慣れてる人は、一回聴けば「ココとココが繋がってるよね」とか直感的にわかるはず。


過去にあったことをぶっ壊さないと新しいことはできない

ーー「ヒップホップの初期衝動をいかに高いレベルで表現するか」というテーマは最初からあったんですか?

Meiso:いや、全然。最初はMA$A$HIくんと「ボサノヴァっぽいビートで軽めのEPを作ろう」と話してて。もともとボサノヴァのビートが好きだから。「轆轤」「For the love」「Double Fresh」「少年時代」ができた時点で、ウルトラ・ヴァイヴの担当とリリースの相談をしたんです。そしたら「これは4曲だけでは完成しないんじゃないですか?」って話になって、この世界観を広げてみようと考えるようになったんです。

ーーなぜテーマが「ボサノヴァ」から「ヒップホップの初期衝動」になったんですか?

Meiso:アルバムの世界観について改めて考える過程で、「原点回帰」というワードが出てきたんですが、ただ回帰してもつまらない。じゃあサイクルを何周も回って、その先にあるものを作ったらどうだろうと思ったんです。ボサノヴァはJ Dillaとか自分が好きな90’sのヒップホップにサンプリングされているから、そこでテーマがリンクしました。

ーーなるほど。

Meiso:自分たちが好きな90’sヒップホップを現代にどう表現するか、時代の流れの中に消えていったMCのスキルフルな部分に新しい息吹を吹き込むか、そういうこともやってみようと。だからこのアルバムは自分の中では結構直球のアルバムなんです。歌詞も全曲ヒップホップについて歌ってて、例えば「PYRO」はさっき話した”瞬間に生まれる爆発的クリエイティヴィティ”をマグマに喩えています。

ーーこの曲に参加しているOmega Cixさんはハワイのラッパーですね。

Meiso:彼は自分のヴァースで実際の地名を入れたりしてますしね。ハワイって海底火山が噴火してできた島なんですよ。噴火というと危険なイメージがあるけど、マグマが地球を作ってる。破壊しながら創造してるんです。過去にあったことをぶっ壊さないと新しいことはできない。

ーーハワイはMeisoさんにとっても縁が深いと土地ですね。

Meiso:はい。自分はそこでヒップホップを学んだということも関係してますね。


続けていると前とは違う景色が見えてくる

ーー「何周もサイクルしてその先にあるもの」というのは、13曲目の「邪魔者」で歌われていますね。

Meiso:そのメッセージは「邪魔者」に集約されています。人は初期衝動から始まってだんだんと物事に飽きていく。お菓子や単純なおもちゃで喜んでた子供も、大人になるとそんなものでは満たされなくなっていくように。でもそれを超えて2〜3周目でしか見えてこない新しい景色があるっていう感覚を題材にしています。

ーー冒頭の英語の演説はどういうことを話されているんですか?

Meiso:演説というか、アメリカのコメディアンのネタなんですよ。昔アメリカでポリオ(小児麻痺)が大流行して、子供がたくさん亡くなったことあって。でもそのコメディアンは死ななかった。なぜか? それは彼が下水道が流れ込むドブ川のようなハドソン川でずっと泳いでいたから。つまり生きていく上では毒も必要だという。

ーー障害を超えることで新しい景色が見えるということですか?

Meiso:そうですね。自分はヒップホップに飽きていた時期があるから、そこに対する自戒も込めてます。周りに辞めちゃった人も多いし。でも続けていると前とは違うものが見えてくるんだなって。

ーー今回のアルバムを聴いて、ヒップホップの奥深さを改めて感じたんですよ。ラップスキル、ワードプレイ、言葉選び、競技性、本当にいろんな側面が表現された作品だなって。

Meiso:スクールですね。僕は若い時にハワイのDirect Descendantsというクルーに在籍してたんですが、当時の仲間が「これを聴いてみろ。これはスクールだから」ってNOAH 23というカナダのラッパーのCDを持ってきて。それをみんなで聴いたら、ものすごいスキルでメロディのあるチョップをしてて、その場にいた全員が衝撃を受けて打ちのめされたんです。リリックやフロウはもちろん、「どこまでスキルとオリジナリティの高い事をやれるか」という挑戦を続けてヒップホップを更新していく義務がアーティストにはあると思います。


TEXT:宮崎敬太

PHOTO:小原啓樹

『轆轤』(発売中)

TRACK LIST :

1. 前業 -Intro- (feat. SPIN MASTER A-1)

2. 轆轤

3. Double Fresh (feat. 言xTHEANSWER, SPIN MASTER A-1)

4. For the love (feat. BASI)

5. Universal Language (feat. OYG)

6. A2Z (feat. Myka 9)

7. 八戒

8. 禁断の果実 (feat. キダハシヤ)

9. Velocity

10. 丑三ツ (feat. Kuroyagi, MA$A$HI)

11. Medicine (feat. E13)

12. PYRO (feat. Hisomi-TNP, MA$A$HI, Omega Cix)

13. 邪魔者

14. 少年時代

15. 還元 -Outro-

16. 丑三ツ -bugseed remix-

17. 轆轤 -bugseed remix-


Meiso "丑三ツ" feat. Kuroyagi, MA$A$HI MV from「轆轤」(Rokuro)

Meiso "丑三ツ" MV Trailer from New Album 「轆轤」(Rokuro)

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