壮絶すぎる人生、遅咲きの天才・・・グラミー賞「最優秀新人部門」アンダーソン・パークに注目

今年のグラミー賞の主要部門の一つ最優秀新人部門(ベスト・ニューアーティスト)といえば、CDを出さずにノミネートまでこぎつけたチャンス・ザ・ラッパーや、売れに売れたザ・チェーンスモーカーズあたりに注目が集中しているが、アンダーソン・パークの存在も忘れてはならないだろう。

日本では昨年秋の初来日公演が即ソールドアウトという意味では、他の新人候補よりも知名度が高く、ドクター・ドレーが自身のレーベルに一本釣りしたことでもその話題性に拍車がかかっているが、30代で遂に浮上した彼の人生は、その素晴らしい音楽性のエッセンスと言うには壮絶すぎるものだ。

海軍にいた黒人の父親と韓国人の母親の間に生まれたパークは、父親が大麻を吸い海軍を解雇され酒やドラッグに溺れ、家庭内で母親がDVを受けるなか育った。後に父親は逮捕、十数年刑務所で過ごしこの世を去るが、その間母親が一人で彼や家族を支える。インタビューでは自身も10代から障害者施設で働いたり介護の夜勤の仕事など厳しい環境下で仕事に従事したりと人間として様々な経験を積んでいる。

LAの音楽学校で作曲などを学び、ドラマーなど裏方での仕事を続けながら浮上を狙い地道に準備を続けて来た彼だが、チャンスが巡ってきたのが20代後半と随分遅咲きだ、その間じっと自らのターンを狙い続けてきた不屈の精神はある意味今ブームの「グリット」にも通ずるものといえるだろう。

2015年ドクター・ドレーの復活作『コンプトン』への参加。このアルバムで実に6曲もの楽曲でコラボを実現したパークは一躍スポットライトを浴びることになり、畳み掛けるように2016年に大傑作アルバム『Malibu』のリリースにつながる。このアルバムには、幼い頃の苦い思い出や自らの厳しい体験なども内包されつつも、最後は夢を負い続ける希望に満ちた内容で締めくくる。


グラミーの公式サイトでパークは、アルバムに収録されている「Come Down」をゴスペルを加えたヴァージョンで披露している。ゴスペルクワイヤをフィーチャーした荘厳なヴァージョンは、成功への渇望やポジティヴなテンションのパートと、昨今の人種問題やトランプ氏への警鐘などもいち早く取り上げてきた。

そんな人生の紆余曲折を音楽で体現してきたアンダーソン・パーク。今回のグラミーでは主要4部門の一つ「ベスト・ニューアーティスト」に加え「アーバン・コンテンポラリー・アルバム」部門にもノミネートされている。

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