エミネムとのコラボは正解?ビッグ・ショーン新作「I Decided」がネット上で物議

ビッグ・ショーンの約2年ぶりとなる4作目のスタジオ・アルバム「I Decided」がリリースされた。

ビッグ・ショーンといえばアリアナ・グランデと交際時に「100万ドルのアソコ」という超下品な歌詞で幻滅させ、その後乗り換えたジェネイ・アイコとの交際報道などでゴシップ・メディア御用達感が板についていたが、新しいアルバムでは、コンセプト・アルバム的なアプローチで自分の人間関係、家族、成功やモチベーションなど俯瞰的に見て物語として仕立てている。どこまでが本心かは伺い知ることはできないものの、ゲスいといわれた男のこの作品での面持ちは部分的にはやや神妙で襟を正したようにも感じられる。

その事を象徴するようにジミー・ファロンがホストを務める「トゥナイト・ショー」でアルバム・ジャケットで家を隔て立っている2人の男が「どちらも自分である」という発言からも窺えるが、この作品が、もう一人の自分に対して「もし生まれ変わることができたら?」といった問いかけから生み出されたことは、本人の言葉もしくは制作に関わったスタッフの発言でも公言されており、その雰囲気たるや更生施設から真人間として戻ってきたかのような雰囲気だ。

冒頭の「Light」でも「お金を数えることと、自分がいかに恵まれてるかを数えることは同じじゃない」と歌ってみたり、その他にも名声とのトレードオフで失ったものに対する後悔とも嘆きにも聴こえる歌詞を散りばめている。

それ以外にも家族への感謝やそのリレーションシップに触れた曲が数多く盛り込み、パール・ジャムやジャック・ホワイトらと共に水道汚染問題へ救済の手を差し伸べたミシガン州フリント市のコーラス隊をフィーチャリングした「Bigger Than Me」など、すっかり社会正義に目覚めた人といった面持ちである。

「社会正義」の最たる例が、今話題をさらっているエミネムとの「No Favers」であるが、トランプ政権に対して、まだまだ手探り感のあるヒップホップコミュニティーの中で、エミネムという後ろ盾の補助輪付きとはいえ公然と批判する初陣を買って出た男気は記憶しておく必要があるだろう。

ただし「No Fevors」での「反トランプ」のメッセージはやや劇薬でもある。すでにエミネムのラップが時代遅れと見る向きと、比較的若いトラップビートを好む彼らの支持層への理解度へ懐疑的かつ辛辣なコメントなど世代間での意見がソーシャルネット上でもちょっとした分断が生まれているのも、もう一つの側面だ。

この事で彼は今までのファンの一部を失うかもしれないし、その一方でもう少し違った層に支持されるラッパーになる、そんな動きを生み出すインパクトをこのコラボレーションは持っている。

ビッグ・ショーン本人はエミネムへの淀み無い敬意を公でも表明しており、初心の気持ちを思い出しインスピレーションの新しいエネルギーを感じ取ったと明かしている。ある意味「第2の人生」と銘打ったリセットボタンを押し、ラップの力が必要とされている時に彼がこのような作品を発表したことは、キャリアの転換点かもしれない。

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