ドラッグの悪魔に取り憑かれコントロールを失った天才ラッパー…。BES本人が話す、過去、現在、そして未来。

職業柄これまでに数多くのラッパーたちの曲を聴いてきたが、天才と呼べる人間は、ほんの一握りだ。2000年代中盤にSEEDAと共にSCARSのエースとしてシーンの勢力図を塗り替えたBESは紛れもなくその言葉が相応しい数少ない表現者だった。 しかし、天才というのは時として、運命そして自らに翻弄される。ドラッグの悪魔に取り憑かれコントロールを失ったこの男は、一度ならず二度目の逮捕で長い時間を塀の中で過ごすことになった。 それから2年以上の時が経った2016年。 春の訪れと共に釈放されたBESは、これまでの既発曲とエクスクルーシブを織り交ぜた、名刺代わりとも受け取れるミックス『BES ILL LOUNGE 2』を持って再びシーンに戻ってきた。しかし、塀の中にいる間に名前すら知らない人もいるほど、シーンの状況は一変した。その中で果たしてBESは、Re:Re:Rebuildできるのだろうか? インタビューは苦手だと言うBES本人が話す、過去、現在、そして未来。 


――4月に出所して約5ヶ月経ちましたが調子はどうですか? 

 BES:まあ、後遺症とかいろいろあってダメな時もあるんですけど。 

 ――最近はかなりのペースでRECをしているという話を聞きましたよ。 

 BES:そうですね。(出てから)1ヶ月ぐらい経った頃に漢君から連絡があって、「何やってんの? スタジオ来いよ。RECするぞ」ってゴリ押し電話があって。それでその日は徹夜でした(笑)。 

 ――それまではRECしていなかったんですね。 

 BES:初めてのRECが鎖でしたね。 

 ――その時の音源は世には出るんですか? 

 BES:いや、最悪です。何時間もブースにこもってたんですけど、全然ダメでしたね。 

 ――刑務所の中でラップはしていたんですか? そもそも、できる環境ではなかったとか。 

 BES:やってる人はいるんすよ。元●●●で運動場とかでみんなの前でノリノリでラップしている人もいれば、工場でラップしてる奴ら同士でフリースタイルやって、みんなに教えるとかって。でも、俺はそういう場所にめぐまれなくて。 

 ――ちなみにBESさんがラッパーだってことは周りに知られていたんですか? 

 BES:本当はラップしてるのを隠したかったんですけど、ペルー人が「カスタムローライディング」に自分が載ってるのを見つけてきたんで、もう「俺だよ俺」って。 

 ――中ではリリックを書き溜めていたんですか? 

 BES:ノートに20ページくらい書きましたね。今回のミックスCDの中にも塀の中で書いた曲が入ってます。 

 ――「Jail」ですよね。 

BES:そうですね。くだらないと思われても、全部“塀の中”で韻を踏んでやろうと思って。 

 ――やはり中は相当ヘビーでしたか? 

BES:もう大乱闘ですね、リンチとかも普通にあったし。 

 ――そんな状況なんですか。 

 BES:再犯になるとそんな感じです。A-THUGも「BES君、再犯は緩いよー」って言ってたんすけど、それがちょっとわかったっす。でも人間関係が超めんどくさいです。現役の人同士が争っちゃったり。13回目とかのおじいちゃんもいて、「もうやめときなよ」って言った時に顔をよく見たら、片目が義眼だったり…。電車でスリやって見つかってボコられて片目潰されたって。 

 ――うわあ。 

 BES:「俺はもう自転車を盗んで刑務所は来ねえって」って言って、5 、6回繰り返してるんすよ(笑)。 

 ――1回目に入ったのって「Rebuild」を出して、すぐぐらいだと思うんですけど。 

 BES:「Rebuild」出して全国を回ってある程度して、頭おかしくなって変なことが始まり2009年に拘束されて2011年に出てきまして、2014年6月15日にパクられてから2016年の4月15日までずっと拘束されてました。 

 ――はっきりと日にちを覚えてるんですね。 

 BES:頑張ろうって思う日もあるけど、出れないからもう諦めちゃおうって思ったりする日もあるんですよ。 

 ――2年以上って長いですもんね。 

 BES:でも17年の人とかもいますからね。その人の前でそういうこと言うと怒られたりするんですよ。 

 ――さっき調子があまりよくない時があるって言われてましたが、5ヶ月経って改善はしてきてるんですか? 

BES:波ですね。精神安定剤を飲んで、1ヶ月に一回精神科に検診してもらってます。 

 ――じゃないと調子悪くなってしまうんですか? 

 BES:そうですね。今回入る前は本当ひどくて…。金が入ると全部にあれになっちゃったりして。

 ――普通の人に比べてラッパーは音源を出したらガバッとお金が入ってくるから、そういったものに陥りやすいのもありますよね。 

 BES:言えないですけど。いろいろありました。 

――今回のミックスには、逮捕前にRECされ出所直前にリリースされた『Untitled』に入ってる曲が多く収録されていますが、ネタと金にまつわるトラブルで追い詰められる状況がそのままに描かれてますよね。 

 BES:あれは氷山の一角っすね。ここじゃ言えない聞いたら嘘でしょみたいな話はいっぱいあります。ハスリングとかいろいろやりました。最低なこともしました。でもやっぱ普通に働いていた方が楽だったのかなって思ったり…嘘ですね。それで得たモノがでかいから、やっぱ働いた方がいいのかなって思うことができるようになったって感じですね。 

 ――それでも生活の中心には今もラップがあるんですね。 

 BES:そうですね。それでいろんなもの失くしたのもあるけど、いろいろ見えてきたものもあるというか。音楽しかないと思ってるんで。それと中にいる時、何人かとやり取りしてたんすけど、お金を入れてくれたりとか、すげー優しくしてくれて。自分ひとりでは何もできないってことを感じましたね。 

 ――『BES ILL LOUNGE 2』と『Untitled』は中と外で手紙をやり取りしながら製作していったんですよね? 

 BES:そうですね。話がダメになりそうな時とかもあったんですけど318とかVIKN君、そしてDJ GEORGE君、協力してくれた皆さんに本当に感謝ですね。

――『BES ILL LOUNGE 2』の選曲はDJ GEORGEさんと話し合って決めていったんですか? 

 BES:最初候補が40曲ぐらいあったんすけど、ジョージ君の仕事が早くて出所してから速攻で決めましたね。 

 ――最初に話は戻りますけど、出てきてからライブ、REC、MCバトルと、かなり精力的に動いてる印象があるんですけど自分ではどうですか? 

 BES:そんなことないっす。後遺症がなければもっと動けるっすね。前はもっと忙しくて目が回る生活してたんすけど、やれてたんで。 

 ――今回入ってから出てくるまでの間に、日本のヒップホップシーンは状況がかなり変わったと思うんですが、それを肌で感じることはありましたか? 

BES:バトルでラップしてる子は上手いっすね。楽曲がどうかはわからないですけど超上手いですよ、みんな。おしゃべりじゃなくてリズムに乗せたラップで韻踏んで勝つみたいな人が増えてきてますよね。 

 ――あとはトラップの曲が日本でも増えてきましたが、トラップについてはどう思っていますか?

 BES:俺は人に言われた時にしかトラップはやりません。他はほとんどサンプリングものです。 

 ――それはなんででしょう。 

BES:トラップも好きなんですけど、俺はやっぱサンプリングものの哀愁系が作りたいんで。 

――中で音楽は聴けないですよね? 

 BES:でも、FM新潟でWiz Khalifaの「see you again」とか流れてたり。Kid Ink、USUって人とか。あとヒルクライムって人とか、モンゴル800のラジオとか。 

 ――やっぱラジオなんですね。 

 BES:そうですね。 

 ――縛られた環境にいたからこそ、生まれるトピックはあるんじゃないですか? 

BES:そうっすね。ぶっちゃけ出てきても最初住むところもなかったんですけど、みなさんのご協力によって思ったよりも早く自立というか住むところも確保できまして。それで今はうまくやってますね。保護会(更生保護施設)にも10何箇所以上に全部断られたんですけど。 

 ――保護会って断られることあるんすか? 

 BES:断られますね。大阪とか広島は取ってくれるらしんですけど広島まで行くんだったら満期でいいやみたいな。東京に戻ってくる新幹線の金もねえじゃんみたいな(笑)。 

 ――神奈川、埼玉のレベルじゃないんですね。 

 BES:そうっす。STICKYと手紙のやりとりで、「俺、川崎行っちゃうかもよ!よろしく」って送ったり(笑)。そんな感じでしたけど、あまり落ちないようにしたっすね。 

 ――ちなみにアルバムはどのくらいできているんですか? 

 BES:プリプロを合わせると3分の1以上はもう録れてます。 

 ――ウエイトが増えたことでラップがしずらくなったとおっしゃってましたけど、BESさんと言えば曲では度々言われてたように、元々スキルに絶対的な自信を持ってましたよね。 

BES:衰えたっすね。 

 ――ブランクがあるから衰えるのは当然だと思うんですけど、以前に比べて変わってきた部分もあるんじゃないですか? 

 BES:なんていうんすかね。この歳になって、他にないオリジナルのフロウを作るのがヒップホップだっていうことがわかるようになったすね。 

――出てきてから録った曲を聴くと、今までよりさらに言葉を聞かせることに比重を置いたフロウになってきてる感じはしていました。 

 BES:そうですね。聴かせたいっていうのはあります、簡単になってますねラップが。それと日本語が多くなりました。 

 ――あんまり向こうのラップは意識しなくなったってきたってことですか? 

BES:自分の好きなのだけ聴きまくってます。 

 ――聴いてるのはどの辺りですか? 

 BES:ブーキャンですね。 

 ――そうなんですね。最近のですか? 

 BES:最近のもいいけど「Ice Skate」とか「And So」とか「Think Back」、「What’s Poppin」とか入ってたりするやつは、意味を追いながら聴いてますね。 

――ちなみに新しいアルバムは、どんな感じに仕上がりそうですか? 

 BES:いろんなのが入ってるっすね。悪く言うと統一感がない。よく言うといろんなものを聴かせたい。こういうのもできる、ああいうのもできるっていうのを見せたいですね。舌っ足らずがやってるぜみたいな(笑)。 

 ――でも、ラッパーは舌ったらずの方がいい声出たりしません? 50CENTとかもそうですよね。

 BES:あれはワザとっすね。D.O君とかも出し方やばいですよね。スキットとか聴いてても真面目にふざけてるっすよね。超怖いし(笑)。 ――真面目な話に戻って、「Jail」の次の曲の「I Miss You」は、女性に向けての曲だと思うんですが、入ってる中で大きな支えになったんじゃないですか?

BES:2年3ヶ月刑務所の中にいましたけど、一通も手紙は返ってこなかったすね。 

――そうなんですか! で、今は? 

 BES:復縁しています。 

 ――なんで返事を書かなかったか聞きましたか? 

BES:いや、聞かなかったすね。別の人と付き合ってても大切な人なんで、見守っていこうかなと。なんかあったら「てめー」みたいな(笑)。そしたら、待っててくれてて。 

 ――そうだったんですね。では、今は波があるとしても割と安定してる感じですか? 

 BES:そうですね。昔はラップで本当いろいろありすぎたっすね。 

 ――以前のインタビューで「これは言っていいのか、悪いのか」っていうことを考えるとペンが止まることもあったとおっしゃってましたが、それは今も変わらないですか? 

 BES:人を傷つけてしまったりとか、誇張してしまう表現をしていることに、自分で気が付いたら消しています。例えばハスリングで言ったら、ある人にとってはあぶく銭だし、ある人にとっては超いい金だし。っていうのをあぶく銭って言っちゃうと、真剣にやってる人たちに「何言ってんのおまえ? あぶく銭じゃなくね? リスク背負って稼いでんるんじゃねえの?』ってなってしまうんで。

 ――音楽をエンターテインメントとして捉えれば、極論嘘いってもいいじゃないですか? もちろん嘘言ってたら後にしっぺ返しがくる場合もあると思うんですけど。 

 BES:ありました~。 

 ――これからの活動としては、まずは自分の体調とかと折り合いつけながらって感じですか。 

 BES:リハビリしながらですね。俺の人生もそんな長いと思ってないし、(ラッパーとして)長くやろうとも思ってないっすね。残る人は残って伝説になる人は良いとおもうんですけど、俺みたいなやつはある程度の歳いったら辞めないと。次の奴もいっぱいいますし。まあ、言い訳ですけどね。自分的にやるだけやって、俺はここまでで来たっていうのを残してから辞めようかなって思ってますね。

 ――じゃあ、BESさん的にはまだやりきれてないっていう? 

 BES:そうですよね。リリックもちゃんと覚えてないし、リリパもちゃんと歌えなかったりするバカですよ(笑)。覚えてこいよって感じなんですけどね。大事な人と大事な仲間と一緒に楽しく音楽やって、振り切って辞めて、余生を過ごそうかなと。第二の人生を歩むみたいのテレビでよくやってるじゃないですか? あんな風にやりたいですね。しかも、こういうふうに明言したらやらなきゃいけないわけだし、やんないでダラダラしてたら文句言われるし。自分を追い込むことでやりきれたらいいなと思ってますけど、2年~3年なのかわからないですけど、それで何ができるかっていうのを考えて書いてるつもりっすね。


TEXT:NAMINONI

PHOTO:小原 弘樹

TRACK LIST 

01. Reason (exclusive!!) 

 02. RE:REBUILD 

 03. Pyrex / BES Feat. NIPPS 

 04. Mudai 

 05. ヒックリカエセ。。 

 06. Shadow / BES Feat. 漢 aka GAMI, ONE-LAW 

 07. ALONE 

 08. ネバギバ / BES from SWANKY SWIPE Feat. STICKY 

 09. How How High / BES from SWANKY SWIPE Feat. メシアTHEフライ 

 10. HOWHIGH REMIX / MEGAG & BES 

 11. LOVE & HATE / SEEDA Feat. BES & SMIF-N-WESSUN 

 12. Group Home / BES Feat. ONE-LAW 

 13. Group Home (Remix) / BES Feat. ONE-LAW 

 14. Kingdom / One-Law Feat. Rgf & Bes 

 15. Tokyo 2 / BES Feat. KNZZ 

 16. Ill Wheels / SEEDA Feat. Bes 

 17. Sell & Buy / BES Feat. NOTORIOUS KNZZ 

 18. Sell & Buy (Remix) / BES Feat. NOTORIOUS KNZZ 

 19. LLLLLLLLLLLLL 

 20. Tokyo 3 / BES Feat. STICKY 

 21. Jail (exclusive!!) 

 22. I miss you (exclusive!!) 

 23. To You / One-Law Feat. Maryjane & Bes 

 24. Fact / SEEDA, BES, 仙人掌 & DJ ISSO 

 25. Bunks Marmared / Swanky Swipe 

 26. 4.27 (exclusive!!) 27. On a Sunday



続きを見る